HPLCメソッド開発においては、専門的知識や経験が求められることが多く、時間と労力を要します。メソッド開発を迅速化できれば、研究開発のスピードアップにもつながります。分離条件を網羅的に検討できるメソッドスカウティング方法をマニュアル化することで、誰でも簡単にかつ迅速にメソッド開発をすることができます。
メソッド開発において分離を大きく左右する3要素
メソッド開発を行う際、図に示すように化合物の性質、固定相(カラム/充填剤)、移動相が分離を大きく左右します。
分離対象の化合物は変更することができないため、固定相、移動相からアプローチを行います。
メソッド開発の流れ
メソッドの検討を行う前に、化合物や分析条件に関する情報収集を行います。分離例などがあればそれを参考に最適化を行いますが、情報がない場合はメソッドスカウティングが有効です。メソッドスカウティングは網羅的に移動相やカラムなど分析条件を検討することができます。メソッドスカウティングで基本条件を設定し、移動相条件やカラムの仕様の最適化を行うことで迅速なメソッド開発が可能です。
逆相分離のメソッド開発
Step 1 メソッドスカウティング
逆相HPLCのメソッドスカウティングにおいて、移動相は有機溶媒の他に緩衝液(水溶液)のpHも分離に大きく左右します。このため、スカウティングの検討項目も多くなります。検討項目が多い場合には短時間で分析が終了する長さ50mmのショートカラムが有効です。ピーク形状、耐久性に優れたTriartシリーズはメソッドスカウティングに使用しやすいサイズも豊富にラインナップしています。Triartカラム、有機溶媒、移動相のpHを組み合わせたメソッドスカウティングで迅速なメソッド開発が可能です。
カラムと移動相の基本条件の選択
分離最適化(最終メソッド設定)
- 逆相HPLCで使用される主な緩衝液や添加剤
Step 2 条件最適化
メソッドスカウティングの結果をもとに条件の最適化を行います。移動相の比率、グラジエント勾配、第2の有機溶媒の添加、カラム温度などを検討し、分離度や保持時間などを改善・最適化します。
移動相比率、グラジエント勾配の最適化
多成分の分析を行う際にはグラジエント溶出が効果的ですが、分析毎に平衡化時間が必要となります。グラジエント勾配の検討の際は、最も保持が強い成分が溶出するようにグラジエントの最終組成を決め、保持が弱い成分が保持するように初期組成を決定します。分離度を向上させたい部分はグラジエント勾配を緩くし、溶出を早めたい部分は勾配を急にすることで分離の改善、分析時間の短縮が可能です。
メソッドスカウティングでのグラジエント結果からアイソクラティックへ移行する場合は、グラジエント条件で初期成分が溶出する有機溶媒濃度より約20%低い濃度で検討します。
市販風邪薬抽出液の分析におけるグラジエント勾配最適化例
Column | Hydrosphere C18 (5 μm,12 nm) 150 X4.6 mmI.D. |
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Eluent | A) 20 mM phosphate buffer (pH 2.5) B) methanol |
Flow rate | 1.0 mL/min |
Temperature | 37 ℃ |
Detection | UV at 210 nm(0-15 min), 235 nm (15-25 min) |
- Thiamine hydrochloride
- Unknown
- L-Ascorbic acid
- Maleic acid
- dl-Methylephedrinehydrochloride
- Dihydrocodeinephosphate
- Saccharin sodium
- Caffeine
- Chlorpheniramine
- Ibuprofen
第2の有機溶媒添加
分離を改善したい場合には、テトラヒドロフランなどの第2の有機溶媒の添加が有効なこともあります。有機溶媒の総量を変えずに一部を第2の有機溶媒に変えることで、選択性が変化し分離が改善しています。
- 関連リンク
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- HPLCカラムの選び方
- C18充填剤選択の目安
- USP一覧表
- 分取精製の流れとその検討方法